≪足元市場動向≫:極端に低い在庫水準が住宅価格の高止まりを助長
2019年以降、米国住宅市場は新型コロナウイルスの影響で大幅に落ち込みを見せたものの、住宅ローン金利の歴史的な低水準に加えて、在宅勤務の増加に伴う郊外の住宅需要が過熱化および深刻な住宅在庫不足により、住宅価格は2021年以降2桁の上昇が続いておりました。 2022年以降は、FRB(連邦準備理事会)による段階的な利上げが行われ、6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では前週に公表された消費者物価指数(CPI)の上昇率が8.6%と約40年ぶりの高い水準となったことを受け、1994年11月以来となる0.75%の大幅な利上げを決定し、30年固定住宅ローン金利は2008年以来となる5.98%まで上昇しました。足元5%台で高止まりしております。


≪米国景気後退による影響≫:以前と比べて住宅市場ははるかに健全でリーマンショック再来の可能性は極めて低い
FRBによる現在の高インフレ抑制(需要の抑制)のための金融引締め政策は、次回7月会合でも0.5%~0.75%利上げが示唆されております。FOMC委員の経済金融見通しによりますと、政策金利は今年末時点が3.4%と、年内あと4回の会合で計1.75%の追加利上げが想定されていることから、これが景気の減速をもたらし、いずれは景気後退(リセッション)を引き起こす可能性が囁かれております。FRBエコノミストは、2022年3月末時点で1年以内にリセッションに入る確率が50%以上、2年以内の確率が70%近いとの研究結果を発表しました。 米国住宅市場においては住宅在庫水準の適正化が住宅価格高騰の足止めとなることから、金融引き締めによる需要の減速は金利の下落をもたらすことで逆に供給面(住宅在庫)にとってはポジティブ材料と考えられます。 また、主な住宅購入層であるアッパークラスにおける雇用の悪化は限定的であり、依然として収入は安定しており米国の労働市場は堅調と言えます。以上のことから、現時点においては住宅市場動向を前向きに捉えており、リセッションによる影響も軽微であると思料します。 さらに、下記3点の通り、2008年リーマンショックのような家計の返済能力を超えた住宅購入・ローンの提供は一切行われておらず、住宅市場ははるかに健全であるため再び住宅市場が崩壊する可能性は低いと考えられます。 I. 住宅ローンの延滞率・差押え率 2008年バブル崩壊以降に延滞猶予制度が導入され、住宅ローンの延滞率は、2008年前後の12%に対して現在は最低水準の3%。ローンの差押え率も同制度によって住宅差押えの禁止令が各金融機関に出され非常に低水準。 II. 住宅価値とローンの比率 住宅ローン負債総額は過去最低の住宅価値の43%以下。バブル崩壊時は多くの人がネガティブ・エクイティ(住宅価値以上の負債を抱えた状態)という状況でした。また、自己資本10%未満の借り手は全体の2.5%程度と非常に低水準。全額キャッシュで住宅を購入する人の割合は32%(2021年)もおり、金利上昇の影響を一切受けておりません。 III. 借り手の信用力 米国ではFICO(Fair Isaac Corp)が算出する個人スコアが日常生活に導入されています。現在の平均スコアは過去最高の751点である一方、2008年前後はサブプライム層が中心であったため平均699点。バブル崩壊以降、バーゼル規制の強化によって金融機関による融資審査が厳格化された影響もあり、実質的に信用力が高い借り手が増加しました。 引き続き米国経済および住宅市場動向について注視し情報提供を行って参ります。【運用会社】
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