米国の賃貸市場:安定した需要と競争激化の中での底堅さ
米国では賃貸住宅の供給が増加しており、これにより家主が価格を引き上げるのが難しくなり、現時点で家賃は非常に安定しています。2023年9月のアメリカ全体の家賃(中央値)は2,011ドルと、過去6か月間ほとんど変わらない水準となっています。米不動産会社Zumperによると、100都市のうち中西部(シカゴ・ミネアポリス・ミルウォーキー)などの40都市ではわずかに家賃相場が上昇し、西部(リンカーン・アービング)などの60都市では横ばいまたは下落しています。
家賃相場は、ここ数年のアパート建設ラッシュによって市場が供給過剰になっているにもかかわらず、家賃はまだ大幅に減少していません。なぜなら、底堅い賃貸需要があるからです。特に高金利のため、多くの潜在的な住宅購入希望者や売主が控えめな姿勢を続けているからです。まだ多くのアパートが建設中で、これらが市場に供給され続けるため、家賃がすぐに大幅に上昇することはないものの、最終的には家賃相場の底上げに繋がると考えられます。
さらに、アパート建設ラッシュにより新しい賃貸物件が市場に供給され続けることで、賃貸市場は従来よりも競争が激化しています。最近では、保有している戸建て住宅を売却するのではなく賃貸に出すケースが増えています。それは、低金利のローンを失いたくない、購入希望者から良いオファーが得られなかった、またはその両方の理由によるものです。2022年は急激な市場の変化に対応するために売主は売却価格の期待値を下げる必要がありましたが、2023年は市場への理解度が深まったことから、家が売れない場合に賃貸に出すという人も増えています。また、一部の家主は賃貸希望者を引き付けるために、公には賃料を下げずに賃貸料金1か月分無料などの特典を提供することも珍しくありません。
このように、昨年から住宅ローン金利および住宅販売価格の上昇も相まって住宅販売は低調に推移している中、賃貸住宅は底堅い需要に支えられ、今後の伸びが期待されています。
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