2022年11月30日までの3か月間で、米国の高級住宅の販売は前年比38.1%減少し、過去最大の減少となりました。これは、一般住宅(非高級住宅)販売の過去最高31.4%の減少を上回ります。
しかし、これは住宅購入者の需要が今後少しずつ戻ってくる可能性を示唆する兆候であるとも言えます。
2022年の高級品(全般)市場と住宅市場は、インフレ、高金利、株式市場の低迷、景気後退懸念など、様々な外部要因からその勢いを失いました。特に、高級品市場は主に以下の理由から急減速しました。
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贅沢品は、経済的ストレスの時期に一番最初に予算削減の対象となる
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高級住宅販売は、パンデミック時に大幅な成長と遂げたため、一般住宅と比べても更に下落する余地がある(上のグラフご参照)
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高級不動産は、投資用不動産として利用されており、2023年には住宅価格と賃料が下落する見込みであり、投資の見通しは不透明
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裕福な買い手は、多くの場合、今は低迷している株式市場に多額の資金を投入している
高級住宅販売の減少が最も大きかった地域はベイエリアでした。
ニューヨーク州ナッソー郡 (-65.6% YoY)、サンディエゴ (-60.4%)、サンノゼ (-58.7%)、リバーサイド (-55.6%)、アナハイム (-55.5%)
最小の減少は、ミズーリ州カンザスシティ (-20.2%)、クリーブランド (-21.5%)、バージニア州バージニア ビーチ (-26.2%)、ミルウォーキー (-26.4%)、ノースカロライナ州シャーロット (-28.3%)
しかし、これらの住宅市場は高級住宅エリアであり、経済が繁栄している場合でも殆どの買い手にとって手が届きにくいため、不況時に販売が減速することは予め予想されておりました。
金利が低下するにつれて、住宅購入者の需要が徐々に戻り始めているという初期の兆候が見られており、最終的には高級品販売の減少も緩和されるのではないかと言われております。
住宅ローンの申し込みとRedfinの物件内覧サービスはいずれも増加傾向にあり、今まで様子を伺っていた人々が市場に戻りつつあります。
しかし、これらの兆候は、まだ市場データには完全に反映されておりません。
住宅ローン金利が低下する中、これから競争が再び激化すると多くの業界関係者は考えています。
高級住宅の供給は過去6年間で最も増加
住宅販売が減少した一方、高級住宅供給量は前年比5.2%増加して約163,000戸となり2016年以来最も増加しました。それに対して一般住宅の供給量は5.7%減少して約552,000戸となりました。
高級住宅販売の大幅な減少が供給量増加の大きな要因ですが、新築住宅の増加も一因です。
エリア別で高級住宅供給の最大の増加が見られたのは 、テキサス州オースティン (前年比 51%)、デンバー (50.1%)、ナッシュビル (35.7%)、ミシガン州ウォーレン (29.8%)、アトランタ (25.9%)でした 。
最大の減少は、サンノゼ (-32.2%)、アナハイム (-22.5%)、ロサンゼルス (-19.4%)、セントルイス (-18.5%)、マイアミ (-16.6%) でした。
住宅価格の伸びは全体的に鈍化
需要の減速により、住宅価格の伸びは市場全体で鈍化しています。高級住宅と一般住宅の価格は1年前の対前年17%の伸びと比較して、今年は対前年10%上昇しました。
販売価格の中央値は、高級住宅で110万ドル、一般住宅で32.5万ドルでした。
エリア別で高級住宅の販売価格の中央値は、サンノゼ (前年比-0.3%) を除くすべての都市で上昇しました。
最大の伸び率はマイアミ (28.1%)、フロリダ州タンパ (27.7%)、シャーロット (25%)、フロリダ州ウェストパームビーチ (25%)、オーランド (23.7%) でした。
増加率が最も小さかったのは、サンフランシスコ (0.1%)、ナッソー郡 (2.1%)、オークランド (3.1%)、オレゴン州ポートランド (5.8%)でした。