【要旨】
住宅ローン金利の上昇に拍車がかかり住宅需要が減少したことで住宅価格が下落
サンノゼ(カリフォルニア州)・オースティン(テキサス州)では全米の約12倍のペースで価格が下落
住宅価格の下落により、住宅販売の全米平均は横ばいに回帰
遠ざかっていた売り手も市場に戻りつつあり住宅販売に明るい兆し
米国の住宅販売価格(中央値)は2023年2月に1.2%下落して386,721ドルとなり、2012年以来初めて前年比マイナスとなりました。
高い住宅ローン金利により住宅購入者の需要が冷え込んでいるため、売り手がこの現状に対応する形で住宅販売価格が下落したものと考えられます。
オースティン(テキサス州)のRedfinエージェントによると
「住宅価格の下落により、より多くの買い手に購入意欲が湧いていますが、未だ金利が高いため買い急いでいるわけではありません。むしろここから更に価格が下がる可能性があるため、買い手は売り手よりも優位に立っている状態にあります。」
2月に契約を結んだ住宅の44.9%が2週間以内に契約を締結しましたが、これは1年前の60.2%から減少しました。直近で、395,000ドルの家の契約をした買い手がいますが、昨年の夏に同じ広さの家が460,000ドルで売却されていました。従ってこの買い手にとっては、今回購入したことで約65,000ドルお得な契約となります。しかし、現在はこれとはまた別のほぼ同じ家が370,000ドルで市場にでているため、今すぐに急いで家を契約する必要はないと言えます。
シリコンバレー銀行の破綻を受けた銀行業界の混乱によって、FOMCによる年内利上げの可能性が大幅に低下しました。これにより住宅ローンの金利が下がり、より多くの住宅購入者が市場に戻ってきます。30年固定住宅ローン金利は、2月に一時約7%にまで上昇しましたが、現在は6.5%近辺で推移しています。
一方で、相次ぐ銀行の破綻に加えてIT業界でのレイオフなどを受けて、住宅購入に慎重な人が多くいます。また、現在住宅を保有している人たちの多くは住宅ローン金利が5%未満の時に契約しているため、今の水準で自宅を手放して新たに住宅ローンを組むことは考えにくいことも事実です。
住宅価格が下落して多くの市場参加者が戻ってきましたが、以前のような明るい住宅市場にまで回復するには少なくとも年内一杯はかかるものと考えられます。