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2024.03/13
資産価値の最大決定要因=金利 をどう予想するか
マーケットに影響を及ぼす要因は多数ありますが、なんといっても一番大きな要因は金利です。金利を下げることで世の中に出回るお金の量を増やせば投資や消費が活発化しインフレになり、逆に減らせば(利上げ)加熱したインフレを抑える効果があるというのが定説ですが、株式、債券、不動産、その他の資産価格も基本は金利に左右されます。なぜかというと、資産価値の基本的な評価方法は、割引現在価値(DCF法)つまりその資産から生まれる将来キャッシュフローを現在の金利を用いて現在価値に割り引いた価値だからです。株などの将来キャシュフローが不透明な資産はDCFだけでは測れませんが、債券など予めキャシュフローが決まっている資産の価値はキャシュフローと金利でほぼ決まります。そして世の中の資産の大半は預金、債券、株、不動産なので、金利が動けば全て連動して動きます。したがって、金利の先行きを予想することが運用をする上で最も重要なポイントになります。厄介なのは、マーケット参加者より一歩先に予想し動くことが鍵になるのです。では、どうしたら金利の先行きを少しでも早く出来る限り正確に予測できるでしょうか? 正確に予想する魔法は無いので、コツコツと景気動向を様々な統計データから一足先に予想していくしかありません。どこの金融機関も調査機関や経済分析担当部署で景気動向分析と金利予想を行っていますが、どこもほぼ同じデータを見て分析をしているので当然似たような分析結果が投資家に届きます。では、我々はそれだけに頼ればよいのでしょうか? 私の経験上、参考にはしても全てをあてにしてはいけません。一つ目の理由は、金融機関の分析レポート内容は営業推進上不利になることは忖度される等、分析結果には様々な立場の思惑が反映されてしまうためです。二つ目はそれらの情報が出てから我々の手元に届くまでに数日~数週間の時差が生じてしまい、手元に届いた時点でその情報はマーケット価格に織り込み済みになってしまう傾向があるためです。そして三つ目は、そもそものデータが数か月古いという点です。現在はネットや衛星からのリアルタイムのデータ等により真実があり、従来の指標に反映されていない可能性もあるからです。幸い、現在は先進国の第一次統計データは各国の政府系機関のHPから誰でもすぐに手に入る時代です。それを大手金融機関よりも同時か一歩早く手に入れ分析し、金利を予想するのです。そして、金融機関から届く各種レポートでマーケットのコンセンサス(市場価格に織り込み済みの情報)と自分の分析とを比べつつ、コンセンサスに従うか否かを探るのが最善の策ではないでしょうか。大事なことは、一つ一つの景気指標に惑わされず、多様なデータを常にモニタリングして景気動向のトレンドを見極めることです。正直、それを実際に行うのは時間も手間もかかりますので、私どもが責任を持って代行しお伝えしていきたいと思います。実際にこのやり方で私は2008年のリーマンショックの被害を避けられましたし、コロナ後の金利上昇にもある程度事前に備えることが出来ました。特に2022年前には伝統的資産である株、債券、劣後債の比率を減らしプライベートデッド等の変動利回りに一歩早くシフトすることに繋がりました。
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2024.03/13
世界の富裕層の運用の基本はアセットアロケーション
ご存じの通り、金融マーケットの未来を正確に、しかも継続して予測するのはあのバフェットでも、どんな天才でも、AIでも無理です。それなら予想が間違っても低いリスク(価値の変動率)で期待するリターンが望めるように、互いに異なる値動きをする資産をバランス良く保有していればいいよね、というのがアセットアロケーションの基本的な考え方です。 このアセットアロケーション=投資ポートフォリオ内で異なる資産クラス(例:株式、債券、不動産、現金、ゴールドなど)の配分割合を決定する概念は、1986年に発表された「Determinants Of Portfolio Performance」(ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因)という論文によって世に広まりました。この論文は、ポートフォリオのリターンの93.6%がアセットアロケーションに依存しているという結論を示し、それまでの資産運用業界に大きな影響を与えました。その後も様々な議論、検証があり、依存度の違いこそあれ、長期運用においてアセットアロケーションが最重要であることは確かなようです。 最近の例でいうと、2022年、それまで0.25%近くの低位にあった米ドル金利が4%上昇した結果、株も債券も平均二桁のマイナスになりました。2021年~2022年に、株や債券を減らし現金比率を高めたり、不動産、プライベートクレジット、インフラ等の金利変動に強いオルタナティブアセットの配分比率を高めることが全体のパフォーマンスに大きな影響を与えました。オルタナティブ部分は5~10%程度というのがそれまでのスタンダードでしたが、昨今のインフレ局面では、保守的な日本の年金基金ですらオルタナアセットを20~30%まで増やしてもいいのではないか、という意見が多くなりつつあります。因みに、流動性を重視する個人と違い、100年単位の長期運用を前提とするハーバード大学の大学基金は60%以上をオルタナティブで運用しています。 財務省によると、2000兆円ある日本人の個人金融資産は97%が日本円、外貨はたったの3%です。そしておよそ半分は預金、株式や投資信託は14.7%となっております。この日本人全体のアセットアロケーションは1980年代から一向に変化しておりませんが、インフレやNISA制度の拡充で今後どう変化するかが注目です。 一方、昔から米国人のアセットアロケーションでは株や債券、又はそれらに投資するファンドの比率が全体資産の半分位占めています。そして米国人の個人資産はこの20年間で平均3.4倍になりました(日本は1.4倍)。 だからと言って、今後も日本人全体のアセットアロケーションが米国人のようになることはまず無いでしょう。何故なら、これまでの違いは両国のインフレ率、雇用賃金制度、年金福祉制度、税制、つまり歴史と文化の違いが背景にあり、そう簡単に変化するものではないからです。しかし我々が日本人の平均的なアセットアロケーションに固執する意味は全くありません。 大切なことは、各人の人生計画、リスク許容度、投資方針、によってオリジナルのアセットアロケーションを最初に組み、定期的に投資環境や価格の変動に合わせて配分比率の調節をする(リバランス)ことです。順番はあくまでもアセットアロケーションの決定が最初で、個別の銘柄選択はその後です。勿論個別選択は大事ですが、それ以上にアセットアロケーションが長期的には大事ということです。 保険会社による本格的なポートフォリオ運用業が始まった200年前から遡ると、英国の国債がポートフォリオの大半を占めていた時代もあれば、プライベートクレジットがポートフォリオの大半を占めていた時代、20世紀に入り世界大戦によるインフレで債券から株へシフトした時代まで、先人達はそれぞれの時代に合った新しいアセットクラスに投資し、アセットアロケーションを変化させてきました。現在、皆さんのポートフォリオはどんなアセットアロケーションでしょうか? Q&Aからご相談いただければ無料で診断させていただきます。