マーケットに影響を及ぼす要因は多数ありますが、なんといっても一番大きな要因は金利です。金利を下げることで世の中に出回るお金の量を増やせば投資や消費が活発化しインフレになり、逆に減らせば(利上げ)加熱したインフレを抑える効果があるというのが定説ですが、株式、債券、不動産、その他の資産価格も基本は金利に左右されます。なぜかというと、資産価値の基本的な評価方法は、割引現在価値(DCF法)つまりその資産から生まれる将来キャッシュフローを現在の金利を用いて現在価値に割り引いた価値だからです。株などの将来キャシュフローが不透明な資産はDCFだけでは測れませんが、債券など予めキャシュフローが決まっている資産の価値はキャシュフローと金利でほぼ決まります。そして世の中の資産の大半は預金、債券、株、不動産なので、金利が動けば全て連動して動きます。したがって、金利の先行きを予想することが運用をする上で最も重要なポイントになります。厄介なのは、マーケット参加者より一歩先に予想し動くことが鍵になるのです。では、どうしたら金利の先行きを少しでも早く出来る限り正確に予測できるでしょうか? 正確に予想する魔法は無いので、コツコツと景気動向を様々な統計データから一足先に予想していくしかありません。どこの金融機関も調査機関や経済分析担当部署で景気動向分析と金利予想を行っていますが、どこもほぼ同じデータを見て分析をしているので当然似たような分析結果が投資家に届きます。では、我々はそれだけに頼ればよいのでしょうか? 私の経験上、参考にはしても全てをあてにしてはいけません。一つ目の理由は、金融機関の分析レポート内容は営業推進上不利になることは忖度される等、分析結果には様々な立場の思惑が反映されてしまうためです。二つ目はそれらの情報が出てから我々の手元に届くまでに数日~数週間の時差が生じてしまい、手元に届いた時点でその情報はマーケット価格に織り込み済みになってしまう傾向があるためです。そして三つ目は、そもそものデータが数か月古いという点です。現在はネットや衛星からのリアルタイムのデータ等により真実があり、従来の指標に反映されていない可能性もあるからです。幸い、現在は先進国の第一次統計データは各国の政府系機関のHPから誰でもすぐに手に入る時代です。それを大手金融機関よりも同時か一歩早く手に入れ分析し、金利を予想するのです。そして、金融機関から届く各種レポートでマーケットのコンセンサス(市場価格に織り込み済みの情報)と自分の分析とを比べつつ、コンセンサスに従うか否かを探るのが最善の策ではないでしょうか。大事なことは、一つ一つの景気指標に惑わされず、多様なデータを常にモニタリングして景気動向のトレンドを見極めることです。正直、それを実際に行うのは時間も手間もかかりますので、私どもが責任を持って代行しお伝えしていきたいと思います。実際にこのやり方で私は2008年のリーマンショックの被害を避けられましたし、コロナ後の金利上昇にもある程度事前に備えることが出来ました。特に2022年前には伝統的資産である株、債券、劣後債の比率を減らしプライベートデッド等の変動利回りに一歩早くシフトすることに繋がりました。