EAM とは何か
EAM は External Asset Manager(外部運用会社)の略で、Independent Asset Manager(独立系運用会社)と呼ばれることもあります。お客様が銀行や証券会社に持つ口座について、運用判断だけを外部から任される運用会社のことです。スイスのプライベートバンキングの世界で発達し、現在はシンガポールや香港でも一般的な形になっています。
ポイントは、EAM が「口座を持つ会社」ではないことです。資産はお客様名義の口座に置かれたまま、EAM は投資一任契約に基づいて売買の指示を出します。お客様から見ると、資産の置き場所(銀行)と、運用判断をする相手(EAM)が分かれる構造になります。
3者の関係:お客様・銀行・EAM
EAM の仕組みには、次の3者が登場します。
- お客様 資産の持ち主。銀行や証券会社に自分名義の口座を持ち、入出金はご本人だけが行います。
- カストディ銀行(プライベートバンク/証券会社) 資産を保管し、売買を執行し、報告書を発行します。
- EAM お客様と投資一任契約を結び、合意した方針の範囲で、銀行に売買の指示を出します。
EAM が銀行に対して持つ権限は、一般に「限定的な代理権(Limited Power of Attorney)」と呼ばれるもので、対象は売買の指示に限られます。お客様の口座から出金や送金をする権限は持ちません。この一点が、EAM の仕組みを理解するうえで最も重要です。資産は常にお客様名義の口座にあり、EAM の財産とは完全に分けて保管されます。
銀行の担当者に任せるのと、何が違うのか
プライベートバンクにも、運用を一任できるサービスはあります。EAM との違いは、主に次の3点です。
1. 利益相反の構造
銀行は自社の商品や、手数料の高い商品を勧める動機を構造的に持っています。EAM は特定の銀行に属さないため、商品の選定を「お客様の目的に合うか」だけで判断できます。これは EAM の側に高い倫理観があるからというより、報酬の受け取り方が異なるからです(後述)。
2. 担当者の継続性
銀行の担当者(リレーションシップ・マネージャー)は数年単位で異動や転職があり、そのたびに方針や会話がリセットされがちです。EAM は運用会社として、方針と記録を会社の責任で引き継ぎます。
3. 複数の銀行を横断できる
EAM は複数の銀行・証券会社に対応しているため、口座を複数の金融機関に分けていても、全体をひとつのポートフォリオとして見ることができます。銀行の担当者には、他行の口座は見えません。
費用の考え方
EAM を使う場合の費用は、大きく2つに分かれます。
| 費用 | 誰に払うか | 内容 |
|---|---|---|
| 運用報酬 | EAM | 運用資産の残高に対する年率で設定されるのが一般的。方針の策定、売買判断、報告が含まれます。 |
| カストディ・取引手数料 | 銀行・証券会社 | 口座の保管料、売買手数料、為替手数料など。銀行ごとに体系が異なります。 |
透明性を見分けるうえで確認したいのが、「リトロセッション」と呼ばれる、商品の提供会社から運用会社に支払われる販売手数料の扱いです。これを受け取る運用会社は、手数料の高い商品を選ぶ動機を持ちます。運用報酬をお客様からだけ受け取り、商品の提供会社からは受け取らない、あるいは受け取った分をお客様に還元する、という方針かどうかは、契約前に確認する価値があります。
向いている人、向いていない人
- 向いている 複数の金融機関に資産が分かれている方。銀行の担当者が替わるたびに説明をやり直すことに疲れた方。日々の判断は任せたいが、資産の置き場所は自分の名義で管理したい方。
- 向いていない 自分で銘柄を選んで売買すること自体を楽しみたい方。短期の値動きで頻繁に方針を変えたい方。
シンガポールでの規制
シンガポールで EAM として投資一任運用を行うには、金融管理局(MAS)の資本市場サービス(CMS)ライセンスが必要です。また、個人のお客様に対する EAM サービスは、証券先物法に定める適格投資家(Accredited Investor)を対象とするのが一般的です。適格投資家の要件は、2026年時点で、純金融資産が100万シンガポールドル超、直近12か月の所得が30万シンガポールドル以上、または純資産が200万シンガポールドル超(主たる住居の評価は100万シンガポールドルまで)のいずれかとされています。詳細は最新の法令をご確認ください。
